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移転価格税制に関するニュースレター

移転価格税制に関する政令Decree 20/2017/ND-CPへのガイダンスとなるCircular 41/2017/TT-BTC

移転価格税制に関する2017年2月24日付け政令Decree 20/2017/ND-CP (以下 “Decree 20”) の一部条項に関するガイダンスとして、財政省は、2017年4月28日付けCircular 41/2017/TT-BTC (以下 “Circular 41”) を発行しました。Circular 41は、2017年5月1日に発効しています。

Circular 41では、比較可能性分析、移転価格算定方法、移転価格開示申告書および移転価格文書の申告・作成、移転価格開示申告書および移転価格文書作成の免除規定に関する詳細なガイダンスをしています。今回の弊社Grant Thornton Vietnamのニュースレターでは、Circular 41の概要についてご案内申し上げたく存じます。

1. 比較可能性分析

Circular 41は、関連者間取引および納税者の特性に関する分析、そして、移転価格算定方法の選択に際しては、関連者間取引の契約書や合意書の条項と異なる場合があっても、実質と事業実態が優先されることを強調しています。実質と事業実態が独立企業原則に沿わない場合には、税務当局により、独立企業原則に基づいた事業本質の再評価が行われ、関連する各々の関連者が負担すべきリスクが再分配されます。

更に、移転価格に基づく修正については、重要な差異の調整が全て可能な場合には独立企業間価格幅の第1四分位に基づくこと、そして、重要な差異の殆どが調整可能なだけである場合には5つ以上の比較対象を使用した中央値に基づくことが明確にされています。

Circular 41では、移転価格文書作成に際して実施すべき分析に関する具体的なガイダンスがなされています。概要は以下の通りです。

  • 取引対象となる製品、サービス、および、資産(無形資産を含む)の特性に関する分析。
  • 各々の関連者が遂行する機能、使用する資産(無形資産を含む)、負担するリスクに関する分析。これは、通常、FAR分析と呼ばれます。これによって、独立企業原則に基づく事業および取引の実態評価とリスク配分を税務当局が行う際に必要となる検証対象企業の特性分析をします。
  • 契約書や合意書が存在しない場合も含めて、合意された取引条件、または、契約書で締結された取引条件、そして、事業実態における実質的な取引条件に関する分析。
  • 納税者(即ち検証対象企業)の取引価格、収益性、収益配分に影響を与える経済条件に関する分析。選択された比較対象企業がベトナム国外の企業の場合には、事業分野や市場に関する比較可能性分析に注意する必要があります。
  • 納税者が構築した定量的かつ定性的な指標に基づく重要な差異。即ち、比較分析に際して取引価格、収益性、収益配分に重要な影響を与える重要な差異に関する分析。

2. 移転価格算定方法

Circular 41では、再販売価格基準法、原価基準法、そして、利益比準法を適用するための条件を明確にすると同時に、各々の方法が適用できなくなるような重要な差異、例えば、会計方針、営業・マーケティング費用や親会社からの委託生産に関わる費用、企業グループ内役務費用など機能を反映する費用に関する差異にも言及しています。

また、最も一般的に適用される利益比準法について、使用すべき利益水準指標も明確に規定されています。純売上高、費用(または総費用)、あるいは、資産(または総固定資産)に対する利払前・税引前利益(EBIT)(金融収益・金融費用を除く)の比率を使用します。

3. 移転価格開示申告書および移転価格文書の申告および作成

Circular 41では、Circular 156/2013/TT-BTCで発行された従来の開示様式Form 03-7/TNDNに代わる新しい4つの移転価格開示申告書様式、そして、移転価格文書に関するガイダンスもなされています。概要は以下の通りです。

  • 様式 01:関連者および関連者間取引に関する情報。
  • 様式 02:作成したローカルファイルの内容に関する情報のリスト。
  • 様式 03:作成したマスターファイルの内容に関する情報のリスト。グループの活動、グループの方針、グループ内でのサプライチェーンにおける機能・資産・リスクの配分に関する方針とそれに相応する利益配分、グループまたは関連者間取引レベルでの移転価格算定方法などが含まれます。
  • 様式 04:最終親会社の国別報告書に記載された情報の開示。申告年度に相応する年度、または、前年度の国別報告書に基づきます。納税者は、申告年度に相応する年度の国別報告書、または、前年度の国別報告書の写しを保管します。また、複数の最終親会社を持つ場合は、全ての最終親会社の国別報告書の写しを保管します。

4. 移転価格文書作成の免除規定

Circular 41では、移転価格文書の作成義務が免除される3つの場合を以下の通り規定しています。

  1. 年間売上高が500億VND未満、かつ、関連者間取引総額が300億VND未満の場合。
  2. 事前確認制度に基づいて、税務当局から移転価格算定方法に関する確認を得ており、規定に基づく定期報告書を漏れなく提出している場合。
  3. 以下の条件を全て満たす場合。
  • 単純な機能を実施している。
  • 無形資産の開発や使用による収益計上や費用発生が無い。
  • 年間売上高が2,000億VND未満。かつ、
  • 純売上高に対する利払前・税引前利益(EBIT)(金融収益・金融費用を除く)の比率が、販売業の場合は5%以上、製造業の場合は10%以上、加工業の場合は15%以上。

5. 弊社Grant Thornton Vietnamからの提言

税務当局による税務調査や移転価格調査の強化が行われている中での政令Decree 20/2017/ND-CPおよびガイダンスCircular 41/2017/TT-BTCの発行は、移転価格税制の法的枠組みを整備して、一貫性のある租税管理そして税務調査・移転価格調査を専門的かつ透明性のある形で実施するための基礎とする努力の表れだと思われます。

同時に、税務当局は、必要に応じて移転価格更正を行うための内部データベースの整備に注力しています。最近の移転価格調査は、納税者のみならず、グループ全体でのサプライチェーンのレベルでの事業モデルに関する分析、取引価格に影響を与える重要な要素に関する分析を深くそして実態に即した形で実施することを前提とした、より専門的かつより複雑な形で実施されるようになってきています。

従いまして、弊社Grant Thornton Vietnamからは、関連者間取引を持つ企業の皆様に対して、以下のようなご提言をさせて頂きたく存じます。

  • 関連者間取引が市場価格で実施されていることを証明できる移転価格文書を、移転価格税法の規定に準拠した形で漏れなく整備しておくこと。これによって、移転価格リスクを軽減し、税務当局への説明で主導権を持つことができます。移転価格文書は、ベトナムの移転価格税制に準拠して、関連者間取引が発生した全ての年度に対して漏れなく作成しておく必要があります。
  • 過年度の移転価格開示申告書を精査して、移転価格税法の規定に基づいた正確かつ漏れない内容になっているかを確認すること。特に、関連者、関連者との関係、関連者間取引、関連者間取引の金額、そして、移転価格算定方法などに関する情報が、移転価格文書の内容と整合性を持つことが重要です。
  • 移転価格調査だけでなく、通常の税務調査によっても移転価格更正を受ける可能性があることにご留意下さい。
  • 親会社およびグループ会社全体から協力を得て、グループレベルでの財務情報を入手すること。ベトナムおよびグループ各社が所在する国々での規定に基づく国別報告書およびマスターファイルの作成、そして、その内容に関する申告書作成のために必要となります。
  • 税務そして移転価格の経験を十分に持っている専門担当者を配置すること。移転価格開示申告書や移転価格文書の作成、そして、法人所得税確定申告の手続きがより効果的にできるようになり、税務当局からの問い合わせに対しても迅速な対応が可能になります。
  • 必要に応じて外部の税務専門家へ問い合わせをすること。移転価格税制に関する最新の情報を把握することによって、移転価格開示申告書や移転価格文書の作成を適切に行うことができ、また、適切な事業活動の計画立案も可能になります。

何かご不明の点などございましたら、ご遠慮なく、弊社Grant Thornton Vietnamの税務専門家へお問い合わせ下さい。