1. 2024年上半期の付加価値税減税
2024年上半期6か月間の付加価値税減税案に関して意見を求める2023年10月13日付けOfficial Letter 11239/BTC-CSTが財政省から公布されました。これによれば、付加価値税率10%が適用される特定の物品・サービスに対する付加価値税減税は、2022年および2023年に安定して実施されました。これを踏まえて、規定の一部物品・サービスを除いた税率10%が適用されている特定の物品・サービスに対する付加価値税の2%減税(8%への減税)が財政省から提案されました。付加価値税の減税措置が適用されるのは2024年1月1日から2024年6月30日までの期間とされました。
財政省の提案通りの付加価値税減税に関する国会決議案を承認する2023年11月3日付け決議Resolution 182/NQ-CPが政府から公布されました。同決議では、財政大臣に対して、首相からの委任に従い、政府に代わって、規定に基づく付加価値税減税の国会決議案に関する国会および国会常任委員会への報告書へ2023年11月3日中に署名し、進捗度および品質を担保すること、そして、規定に基づく国会および国会各機関への報告・説明を行うことを指示しました。
その後、上述と同じ内容での付加価値税減税に関する2023年12月28日付け政令Decree 94/2023/ND-CPが政府から公布されました。過去2年に実施されたものと同様の内容です。
2022年および2023年に実施された付加価値税減税政策は企業そして経済へ積極的な影響を与えましたが、一方で、この政策には実務的に多くの問題に悩まされている企業が少なくありません。とりわけ、税率10%の対象となる物品と税率8%へと減税される物品の区別から生じる問題が重要です。例えば、この問題について、ベトナム裾野産業協会が、付加価値税率の判別に関する疑問点への回答とガイダンスを要請する2023年6月5日付けOfficial Letter 21/2023/VASI-CVを送付しています。政策実施ガイダンスとなるDecree 15/2022/ND-CPとDecree 44/2023/ND-CPが政府から公布されていますが、どちらの税率対象となるかの区別には難しい問題が残っているのが実情ですので、実務上のリスクとなるかもしれません。
2. 付加価値税還付申請書類の分類に際するリスク管理手法適用に関するDecision 1388/QD-TCT
付加価値税還付申請書類の分類、および、還付後税務調査の計画立案のための納税者選択に際するリスク管理手法適用に関する2023年9月18日付け決定Decision 1388/QD-TCTが税務総局から公布されました。概要は以下の通りです。
このDecisionでは、付加価値税還付申請書類の分類のため、また、還付後税務調査の計画立案を目的とするリスクの兆候が見られる納税者の選択のための基準指数を公布しており、以下の通り、3つのグループから構成されています。
グループ I: 還付前に税務調査を行う付加価値税還付申請書類として分類するための基準指数グループ。
グループ II: 付加価値税還付申請書類の分類にあたりリスク度採点法を適用する際に使用する基準指数グループ。
グループ III: 税務当局の管理要請に基づいて追加的に使用することができる基準指数グループ。
付加価値税還付申請書類は以下の通り分類されます。
高リスクに該当する還付申請書類は、還付前に税務調査を実施します。
事業年度の初月から連続する12カ月間に連続して還付申請がある場合、高リスクと評価されます。
- 前回のリスク評価時と比較して、リスク合計点が異なる、または、基準指数毎のリスク点数が異なる場合、還付前に税務調査を実施します。
- リスク合計点および基準指数毎のリスク点数が前回のリスク評価時と同じ、または、基準指数毎のリスク点数が前回のリスク評価時より低く、従ってリスク合計点も前回より低い場合は、以下の通りです。
(i) 前回の還付申請に対する税務調査、または、還付後税務調査の結果で、過少納税額または過剰還付額を発生させるような間違いが発見されなかった場合、次回の還付申請は、還付前税務調査の対象としません。
(ii) 前回の還付申請に対する税務調査、または、還付後税務調査の結果で、過少納税額または過剰還付額を発生させるような間違いが発見された場合、次回の還付申請は、還付前税務調査の対象となります。
中リスクおよび低リスクに該当する還付申請書類は、還付後に税務調査を実施します。
税関法令の遵守に関連する基準があること、そして、評価指数には税関当局の情報も含まれることが注目されます。
3. 外国で納付する強制社会保険料の個人所得税上の取り扱いに関する税務総局Official Letter 6002/TCT-DNNCNおよびOfficial Letter 684/TCT-DNNCN
個人が外国で納付する強制社会保険料を在ベトナムの会社が精算する場合の当該保険料の控除に関する疑問に対して、税務総局から2023年12月29日付けの回答が公布されました。概要は以下の通りです。
在日本の会社により、企業内異動の労働者としてベトナムでの赴任を命じられた外国人の場合で、給与所得が在ベトナムの会社と在日本の会社から支払われ、その内、外国での給与所得分は在日本の会社が支払い(外国で納付する強制社会保険料額を含む)、その全額を在ベトナムの会社が精算する場合、ベトナムでの個人所得税の計算に際して、当該社会保険料の控除はできません。
しかしながら、上記ガイダンスにより生じる問題を理解した税務総局は、Official Letter 6002/TCT-DNNCNでの回答に対する補足ガイダンスとして、2024年2月27日付けOfficial Letter 684/TCT-DNNCNを公布しました。概要は以下の通りです。
企業内異動の形態でベトナムに赴任した外国人居住者が、外国からの給与所得を持ち、当該外国人が国籍を持つ国家の規定によるベトナムでの強制社会保険と同様の強制社会保険料を納付する場合、ベトナムでの個人所得税課税所得を計算する際に控除することができます。
4. 法人所得税に関する税務総局Official Letter 5114/TCT-CS
同一グループ内での出資持分保持権の譲渡に関わる疑問に対して、2023年11月15日付けOfficial Letteが税務総局から公布されました。概要は以下の通りです。
合法的な資産・権利・利益(同社への出資持分全額を保持する権利を含む)の同一グループ内の会社への譲渡が生じる合併計画がある場合、所得が生じるのであれば、規定に基づく法人所得税の申告・納税を行います。規定に基づいて資本譲渡から生じる外国組織の法人所得税を、同社は、当該外国組織に代わって申告・納税する義務を負います。
5. 企業分割に伴う移転資産に関するハノイ市税務局Official Letter 76785/CTHN-TTHT
企業分割に伴う移転資産に関する疑問に対して、2023年10月27日付けOfficial Letteがハノイ市税務局から公布されました。概要は以下の通りです。
企業の分離・分割に伴う付加価値税の申告納税義務:
- 事業拠点内部での従属会計単位間で資産を移転する場合、企業分割に伴う移転資産については、移転資産を持つ事業拠点に資産移転指示書、そして、資産の取得元を示す書類を備えておく必要があります。インボイスの発行は不要です。
- 同一の組織・個人の中での独立会計単位間または法人格を持つ単位間で資産を移転する場合、使用中の固定資産が減価償却を実施しているのであれば、1つの事業拠点が100%所有する単位間での付加価値税の課税対象となる物品・サービスの製造・販売に資するための資産移転は、会計帳簿上の価額に従います。インボイスの発行も付加価値税の申告・納税も不要です。一方で、付加価値税の課税対象とならない物品・サービスの製造・販売施設への移転であれば、規定に基づくVATインボイスの発行、付加価値税の申告・納税を行う必要があります。
6. 修正申告実施に関する税務総局Official Letter 4955/TCT-KKおよびOfficial Letter 5090/TCT-KK
修正申告に関する疑問に対して、以下のようなガイダンスが税務総局から公布されました。
還付前税務調査の結論が公布された後に、または、実地調査後の行政違反処分に関する決定が公布された後に、購入した商品・サービスに関わるVATインボイスで漏れていたものがあることに気づいた場合、付加価値税法改正法31/2013/QH13の第1条第6項ddおよび租税管理法38/2019/QH14の第47条第3項の規定に従い、以下の通り実施します。
- 仕入VATは、それが発生した月のVAT納税額を計算する際に申告・控除します。仕入VATの申告に間違いがあった場合、税務当局による実地調査決定が公布される前に修正申告を行うことができます。
- 実地調査後の処分に関する結論・決定が税務当局・管轄当局から公布された後の場合、修正申告は、以下の通り規定されています。
a) 納税額を増額する修正の場合、控除可能税額を減額する、または、減免・還付される税額を減額する修正の場合、修正申告を行い、租税管理法の第142条および第143条が規定する行為に対して租税管理に関する行政違反処分を科せられます。
b) 申告書類に間違いがあって、修正申告をすれば納税額を減額する場合、または、控除可能税額を増額、減免・還付される税額を増額する場合、租税に関する不服申立て審査に関する規定に従い実施します。
7. 拡大投資プロジェクトの税務優遇に関する税務総局Official Letter 5115/TCT-CS
拡大投資プロジェクトの税務優遇に関する疑問に対して、2023年10月27日付けでハノイ市税務局からガイダンスが公布されました。概要は以下の通りです。
- 投資プロジェクトの買収により投資プロジェクトを実施する会社が、所有権移転後に拡大投資を行い、2015年6月22日付け財政省Circular 96/2015/TT-BTC第10条第4項が規定する3つの条件のうちの1つと法人所得税優遇条件を満たす場合、拡大投資から生じる追加所得分は規定の優遇措置を受けることができます。
- 特別消費税の課税対象となる物品の製造プロジェクトに関わる法人所得税優遇に関しては、2015年7月1日(投資法の施行日)以降に投資証明書の発給を受けた特別消費税の課税対象となる物品を製造する会社の拡大投資プロジェクトの場合、特別消費税の課税対象となる物品の製造活動による所得について、拡大投資プロジェクトから生じる追加所得分は法人所得税の優遇措置を受けることができません。