今回の弊社Grant Thornton Vietnamのニュースレターでは、税務およびインボイス・証票に関わる法律およびガイダンスの最新情報をご案内申し上げます。

1. 2024年3月12日および2024年3月14日に税務総局により開催された2023年度個人所得税確定申告および法人所得税確定申告に関する納税者支援オンライン会議における注目すべき回答

2024年3月12日および2024年3月14日、税務総局は2023年度確定申告に関する納税者支援のオンライン会議を開催しました。納税者に対する注目すべきいくつかの回答がありましたので、ご紹介致します。

  • 回答1: 経済区での新規投資プロジェクトに対する法人所得税の優遇措置を受けて活動しており、事業分野を追加した場合は、追加した事業分野が、新規投資プロジェクトの範囲に該当するのか、または、拡大投資プロジェクトに該当するのかを、実際の状況に基づいて判断する必要があります。それによって、規定に基づく法人所得税の優遇措置を判断することになります。追加した事業分野が、優遇地域での投資プロジェクトと密接な関係が無く、資本増額や拡大投資による資産増額を行わない場合には、当該活動から生じる所得は法人所得税の優遇措置を受けません。
  • 回答2: 労働法およびその施行細則の規定に基づいて労働者の未消化有給休暇を買い取った場合に発生した費用は、財政省Circular 96/2015/TT-BTC第4条の規定により、法人所得税の計算に際して損金算入が認められます。
  • 回答3: 労働者が自主的に行った時間外労働に対する賃金を支払う場合、労働法が規定する時間を超過する時間外労働の時間に対応する賃金費用額は、法人所得税の計算に際して損金算入が認められません。具体的には、以下の通りです。

労働法によれば、時間外労働時間は、年間で200時間を超えないこと、または、特別な職種の場合には年間300時間を超えないこととされています。

法人所得税法では、法定の規定に基づく合法なインボイスおよび証票が揃っていることが、損金算入の条件となっています。

従って、年間で200時間または300時間を超える部分の時間外労働時間に対する賃金額は、労働法の規定違反になるため、損金算入の条件を満たさないことになります。

  • 回答4: インボイスの発生に伴い月次申告をする外国契約者は、申告方式によって、年度毎の確定申告義務の有無が決まります。具体的には以下の通りです。
  • Decree 126/2020/ND-CP第8条第6項eによれば、見なし税率による源泉方式、または、ハイブリッド方式で納税する外国契約者は、請負契約の完了時に確定申告を行います(年度毎の確定申告は不要です)。
  • 売上と費用の申告により課税所得を計算して法人所得税を納税する外国契約者は、年度毎の法人所得税確定申告を行います。
  • 回答5: 当月分の給与が翌月に支払われる場合の個人所得税確定申告に関わる社会保険料控除額は、社会保険料納付状況を確認する様式12に基づく1月から12月までの金額で良いのか、または、実際に控除した社会保険料額なのかについて、以下の回答がありました。

2013年8月15日付け財政省Circular 111/2013/TT-BTの第8条第2項bでは、給与所得の課税所得認識時期は、機関・個人が労働者へ所得を支払った時期であるとガイダンスされています。

これに基づいて、個人所得税確定申告の際に、「社会保険料控除額」の項目は、暦年度中に実際に控除された社会保険料額に基づいて計算するとの税務当局の回答がありました。

  • 回答6: 労働者が個人所得税の納税主体であり、別の機関が労働者から個人所得税確定申告の委任を受けたが、その後、当該労働者は自ら直接確定申告を行う対象に該当する旨の通知を税務当局から受けた場合の対処法について、以下の回答がありました。

確定申告の委任を受けた後に当該労働者が自ら直接確定申告を行う対象に該当することが分かった場合、2022年3月24日付け税務総局Official Letter 883/TCT-DNNCNの項目I第3点にある以下のガイダンスに従います。

- 個人からの個人所得税確定申告の委任を受けて所得支払い機関が個人に代わって確定申告を行った後で、当該個人が自ら直接に税務当局へ確定申告を行う対象に該当することが分かった場合、所得支払い機関は、当該機関の個人所得税確定申告を修正せずに、確定申告の数値に基づいた源泉徴収票を当該個人へ発行し、源泉徴収票の左下角に「当社は、、、、(委任を受けて)、、、氏に代わり、付表05-1/BK-TNCNの第(何番目かの番号)行にて個人所得税確定申告を行いました」の文言を記入します。そして、当該個人が直接に税務当局へ確定申告をします。所得支払い機関・個人が電子源泉徴収票を使用している場合、電子源泉徴収票のハードコピー変換版を印刷して、上述の文言を記入して当該個人へ渡します。

  • 回答7: 複数の省に持つ計10支店の従業員へ給与を支払う会社が、支店毎の個人所得税額の明細表と共に全支店の労働者の所得をまとめてCircular 80/2021/TT-BTCに基づく個人所得税を申告している場合、確定申告書の作成に際しては、以下のガイダンスに従います。

Circular 80/2021/TT-BTCの第19条第3項a.1によれば、「省毎の個人所得税額の確認は、個人所得税の申告期に応じて月次または四半期毎に行い、確定申告時の確認は不要である」とのガイダンスがあります。

上述の規定およびガイダンスに基づいて、異なる省に所在する従属単位・営業拠点で働く労働者に対して本社で支払われる給与所得から個人所得税額を源泉徴収する場合、確定申告時には、年度中の申告において開示した異なる省に所在する従属単位・営業拠点毎の明細を改めて確認する必要はありません。

Ciruclar 80/2021/TT-BTCに基づく個人所得税確定申告書様式05/QTT-TNCNの項目[31]では、税務年度中に個人が受け取った給与所得から実際に源泉徴収した個人所得税総額を申告します。

2.  付加価値税法改正法草案

国会が付加価値税法の改正法草案を公布しました。以下のような注意すべき内容が見られます。

  • 一部非課税対象が変更、補足されています。
  • 「付加価値税率0%の適用対象となる輸出サービス」グループが、ベトナム領土外で使用する運搬手段のリースサービス、および、国際運輸への直接的または代理店を介して提供する航空・航海のサービス、の2つのグループのみに適用されるよう対象が狭められています。
  • 世帯主・個人事業主に対する非課税となる商品サービスの売上限度額が、年間1億VNDから1億5千万VNDへ引き上げられています。
  • 実地税務調査の決定が税務当局により公表される前であれば、申告が漏れていた仕入れ付加価値税を漏れを発見した月に申告・控除することを認める規定が追加されています。
  • 仕入れ付加価値税の控除条件に関する規定が改正されています。非現金決済証票が必要となる決済金額が、現行の20百万VNDから5百万VNDへ変更されています。
  • 輸出商品に関わる付加価値税の控除・還付要件に必要となる証票として、パッキングリスト、船荷証券、貨物保険証券が追加されています。
  • 付加価値税還付対象が以下の場合へも拡大されています。

o   付加価値税率5%の対象となる商品サービスのみを製造しており、12カ月または4四半期を経ても控除しきれない仕入れ付加価値税額が3億VND以上残っている場合。

o   控除法による付加価値税納税の届出をしている事業施設の投資法令に基づく投資プロジェクト(新規投資プロジェクトおよび拡大投資プロジェクトを含む)が投資段階にあり、控除しきれない投資プロジェクトの仕入付加価値税額が3億VND以上ある場合。還付実施の期限は、投資プロジェクトまたは投資段階・投資項目の完成後1年以内になります。

  • 届出をした定款資本額を全額出資していない場合の投資プロジェクトに対する付加価値税還付を認めない旨の規定が廃止されています。
  • 所有者変更、企業形態変更、吸収合併、新設合併、分離、分割、活動停止の場合に付加価値税還付を認める規定が廃止されています。

3.  独立会計支店が従属会計支店へ改組した場合の繰越欠損金に関する税務総局Official Letter 1442/TCT-CS

2024年4月9日付け税務総局Official Letter 1442/TCT-CSによれば、現行の法人所得税法令では、企業形態変更、分離、分割、吸収合併、新設合併の場合における繰越欠損金に関する規定はありますが、独立会計支店が従属会計支店へ改組した場合の繰越欠損金に関する規定はありませんが、独立会計支店が従属会計支店へ改組した場合、独立会計支店の累積欠損金は、改組後の従属会計支店へ継承されません。

4. 裾野産業製品を製造する投資プロジェクトへの優遇措置に関する税務総局Official Letter 658/TCT-CS

複数の優遇措置確認書の発給を受けた複数の裾野産業製品を製造する投資プロジェクトに対して、2024年2月23日付け税務総局Official Letter 658/TCT-CSが公布されました。これによれば、優先対象となる裾野産業製品の製造に対する優遇確認書は、裾野産業要件に基づく法人所得税の優遇が適用される根拠となります。

  • 規定の要件を満たす投資プロジェクトは、優遇確認書の発給時点から裾野産業の要件に基づく法人所得税の優遇が適用されます。
  • 複数の裾野産業製品を製造する投資プロジェクトが複数の優遇確認書の発給を受けている場合、確認書の発給を受けた製品は、優遇確認書が発給された税務年度から投資プロジェクトの残りの期間において優遇を受けることができます。

5.  企業合併に伴う付加価値税に関するハノイ市税務局Official Letter 4267/CTHN-TTHT

企業合併に伴う付加価値税に関する疑問に対して、ハノイ市税務局から公布された2024年2月22日付けOfficial Letter 4267/CTHN-TTHTが以下のように答えています。

ある会社(以降は「非合併法人」)が、全ての資産、権利、義務および合法的利益を別の会社(以降は「合併法人」)へ移転し、同時に、非合併法人が消滅することにより合併法人へ合併されることができます。

2020年6月17日付け企業法59/2020/QH14の第201条では、合併に関して、ある会社が、全ての資産、権利、義務および合法的利益を合併法人へ移転し、同時に、非合併法人が消滅することにより合併法人へ合併されることができると規定しています。これによれば、合併法人は、非合併法人の権利および合法的利益を継承し、法令に基づく各種義務に関して責任を負います。

Circular 130/2016/TT-BTC第1条の規定に基づいて、控除法により付加価値税を納税する会社は、合併に際して付加価値税の過剰納付額、または、控除しきれていない仕入れ付加価値額がある場合、還付を受けることができます。

6.  見なし輸出入に関わる付加価値税に関する税務総局Official Letter 558/TCT-CS

Khanh Hoa省、Thanh Hoa省、Ha Nam省、Binh Duong省、Bac Ninh省、ホーチミン市およびBinh Phuoc省の各税務局から来た見なし輸出入に関わる付加価値税についての疑問に対して、2024年2月20日付け税務総局Official Letter 558/TCT-CSが公布されました。概要は以下の通りです。

Decree 90/2007/ND-CPおよび貿易管理法05/2017/QH14の規定によれば、外国商人が、投資法、商法、企業法において規定される各種形態によりベトナムで投資活動・事業活動を行っている、または、商法、企業法の規定に基づくベトナムでの駐在員事務所、支店を持っている、と判断された場合、ベトナムに所在しない外国商人には該当しません。この場合、外国商人がベトナム企業と売買し、ベトナムで受け渡しをするよう別の企業へ指示をする際の商品売買は、見なし輸出入に該当しません。

従って、見なし輸出入申告書による通関がDecree 08/2015/ND-CP第35条第1項cの規定に従っていないと税関当局が判断した場合、規定に基づく税関申告書に関する条件を満たしていないため税務当局は還付を受け付けません。

7. Google上の広告活動に関わるベトナム法人によるインボイス申告に関する税務総局Official Letter 296/TCT-CS

外国サプライヤーの広告活動に関わるベトナム法人によるインボイス申告に関して、2024年1月24日付け税務総局Official Letter 296/TCT-CSが公布されました。概要は以下の通りです。

  • 付加価値税:Google Asia Pacific Pte. Ltd. (Google)から発行された前払いへのインボイスは控除法による付加価値税の申告を行う組織のためのVATインボイスではないため、規定に基づく仕入れ付加価値税の控除要件を満たしません。
  • 法人所得税:2018年8月15日付けOfficial Letter 3149/TCT-CSのガイダンスを参照するよう言及されています。当該ガイダンスによれば、FacebookやGoogle上でのオンライン広告で発生した費用は、事業活動に関連する実際の要件を満たしており、当社の社名、住所、税務コードが記載された合法的なインボイスおよび証票に不足なく(販売側がインボイスを提供しない場合は規定に基づく外国契約者税の申告書および納税証票があること)、かつ、付加価値税法令の規定に基づく決済証票があれば、法人所得税を計算する際に損金算入が認められます。
  • デジタルプラットフォーム上で電子取引、事業を行う外国サプライヤーがベトナムでの税務登録を行っているか否かの確認方法:外国サプライヤー専用のウェブサイト(https://etaxvn.gdt.gov.vn/)へアクセスして、外国サプライヤーの税務登録状況を検索します。