今回の弊社Grant Thornton Vietnamのニュースレターでは、強制加入社会保険、税務などに関わる法律およびガイダンスの最新情報をご案内申し上げます。

1. 2024年6月29日付け(改正)社会保険法41/2024/QH15
2024年6月29日に国会を通過した社会保険法は、2025年7月1日に施行されます。同時に、従来の社会保険法58/2014/QH13および2015年6月22日付け決議Resolution 93/2015/QH13は廃止されます。新しい社会保険法には、以下のような注意すべき内容があります。

(i) 強制加入社会保険への加入対象が拡大されました。

(ii) 強制加入社会保険料の計算基礎となる最低給与額および最高給与額は、従来の「基礎給与額」に代わって「参照給与額」に基づくことになりました。

(iii) 退職年金受給条件である社会保険料納付期間が20年以上から15年以上へと短縮されました。

(iv) 妊娠出産制度が、任意加入社会保険への加入者の権利として追加されました。

(v) 2025年7月1日以降の社会保険加入者は、規定の場合に該当する場合を除いて、社会保険一時給付金の給付を受けることができません。

(vi) 高齢者に対する毎月の社会給付に関する規定の一部を継承および発展させたものを基礎として国家予算が保障する社会年金給付金制度の規定ができました。

(vii) 社会保険料の徴収・納付に関する新しい規定ができ、納付遅延行為や意図的滞納行為への処分など内容がより明確になりました。

(viii) 社会保険基金の投資および管理、社会保険の組織および活動に関わる支出決算の審査・承認に関するより具体的な規定ができました。

(ix) 社会保険、社会保険分野での電子取引、そして、社会保険政策・制度の実施に関わる国民の満足度評価に関する行政手続きが簡素化されています。

新しい社会保険法の改正事項は、多くの労働者に対する社会的な保護の強化に資すると思われます。

2.  失業保険に関する職業法の一部条項の施行ガイダンスを定めるCircular 3305/VBHN-BLDTBXH

2024年7月25日、職業法第52条、および、失業保険に関する職業法の一部条項の施行ガイダンスを定める2015年3月12日付け政令Decree 28/2015/ND-CPの一部条項の施行ガイダンスとなるCircular 3305/VBHN-BLDTBXHが労働傷病兵社会省から交付されました。留意すべき内容としては以下のような事項があります。

- 労働者が複数の労働契約を締結して最初に効力を持った労働契約に基づいた失業保険に加入しており、当該労働契約の解消または変更によって労働者が失業保険の強制加入対象から外れてしまった場合、次の労働契約の雇用主は、労働者の失業保険加入書類を作成して社会保険組織へ提出する必要があります。提出期限は、最初の労働契約の解消日または変更日から30日以内です。

- 雇用主が、季節労働契約または一定の仕事に基づく3か月以上12か月未満の労働契約を2015年1月1日前に労働者と締結して、当該労働契約を実施している場合、2015年1月1日の時点で当該労働契約の期限が3か月以上残っていれば、雇用主は、2015年1月1日以降、当該労働者を失業保険へ加入させる必要があります。

- 失業保険料の納付期間が36か月超から144か月までの労働者の場合、失業保険給付金の支給を受けていない納付期間は、そのまま納付期間として残されます。一方で、失業保険料の納付期間が144か月を超えた労働者の場合、失業保険給付金の支給を受けていない納付期間は納付期間として計算されません。納付期間として計算される期間は、失業保険給付受給決定書に記載されます。

- 失業保険給付受給決定書に基づく失業保険給付金の受給期限日から3か月を経ても社会保険機関へ給付金の受け取りに来ない、かつ、文書での通知もしない労働者の場合、受け取らない失業保険給付金に対応する納付期間がそのまま納付期間として残されます。

本Circularは、2015年9月15日から遡及して施行されます。

3.  税務分野での電子取引に関するガイダンスを改正するCircular 46/2024/TT-BTC

2024年7月9日、税務分野での電子取引に関するガイダンスを改正するCircular 46/2024/TT-BTCが財政省から交付されました。概要は以下の通りです。

  • IDカードまたはパスポート、身分証明書の提示に替えて、レベル2の電子識別口座の使用を許可することで、引き続いて電子税務取引口座の登録・開設手続きができるようになります。
  • 電子税務登録手続きを直接税務当局へ行う納税者に対する書類受領および処理結果返却の手続きが改正されました。
  • 電子的手段での税務取引における行政違反行為の処分手続きが改正されました。

本ガイダンスは、2024年8月28日から施行されます。

4. 投資プロジェクトに対する法人所得税優遇の可否に関するOfficial Letter 2327/TCT-CS

2024年6月3日、投資プロジェクトに対する法人所得税優遇の可否に関わる問い合わせに対して、Official Letter 2327/TCT-CSが税務総局から交付されました。概要は以下の通りです。

法人所得税法令には、新規投資プロジェクト、拡大投資プロジェクトに対する法人所得税優遇に関する規定があります。投資プロジェクトがあり投資証明書の発行を受けているものの、当該投資プロジェクトが事業活動を継続するために活動しているプロジェクトの資産、事業場所、事業分野を継承しており、既存の機械設備を使用している場合、当該プロジェクトは、税法の規定に基づく新規投資プロジェクトとは認められません。

5. 電子財布を介した決済のインボイスおよび証票に関するOfficial Letter 2677/TCT-CS

2024年6月3日、電子財布を介した決済形態が銀行決済として見なされる条件を満たしているかに関するOfficial Letter 2677/TCT-CSが税務総局から交付されました。概要は以下の通りです。

非現金決済に関する法令の規定に基づいて、電子財布を介した決済サービスの提供ライセンスを中央銀行から得ている仲介会社を通じた決済形態を使用する場合、具体的には、下記の形態による決済を行う場合;

  • 購入者は、購入者の銀行口座または決済アプリから、スマートフォンなどのスマートデバイス上のアプリである決済支援サービスSmartPayを介して、仲介パートナーであるSmart Net Trading and Service Joint Stock Companyの口座へ送金する。
  • Smart Net Trading and Service Joint Stock Companyは、中央銀行から得ている決済仲介サービス提供ライセンスに準拠して、入金額を全てANZ Bankにある販売者の口座へ送金する。

上記の決済形態は、Circular 219/2013/TT-BTC第14条第3項のガイダンスに基づいて、付加価値税申告控除に際する銀行決済に関する条件を満たしていると認められます。

6. 外国での資本譲渡による所得に関するOfficial Letter 3128/TCT-CS

2024年6月3日、外国での資本譲渡による所得に関する問い合わせに対して、Official Letter 3128/TCT-CSが税務総局から交付されました。概要は以下の通りです。

  • 個人所得税に関して: 非居住者となる個人が、ベトナム領土内に源泉のある個人所得税法が規定する課税対象所得を持たない場合、日本での当社資本譲渡活動については個人所得税の課税対象には該当しません。
  • 法人所得税に関して: 間接的にベトナムにある会社の定款資本100%を所有している日本で設立され活動している会社の資本譲渡を法人投資家が行う場合、所得が発生すればベトナムでの法人所得税の課税対象所得となります。当該在ベトナム会社は、規定に従い、外国法人による資本譲渡活動から生じる法人所得税の申告納税を代替する義務を負います。

7. 裾野産業製品に対する法人所得税優遇に関する税務総局Official Letter 3219/TCT-CSおよびバクニン省税務局Official Letter 3206/CTBNI-TTHT

裾野産業製品に対する法人所得税の優遇については、以下のようなガイダンスがされています。

  • 2024年7月26日付け税務総局Official Letter 3219/TCT-CSのガイダンス

拡大投資プロジェクトが、裾野産業製品に対する優遇条件以外の他の条件による優遇を受けている場合、管轄当局から裾野産業製品製造優遇確認書の発給を受けた税務年度から裾野産業製品製造プロジェクトの条件に基づく法人所得税の優遇を受けることができます。優遇を受ける期間は、優遇税率の適用期間、免税期間および50%減税期間とも、裾野産業製品に対する優遇期間から、他の条件による優遇を既に受けた期間を控除した残りの期間になります。

  • 2024年6月18日付けバクニン省税務局Official Letter 3206/CTBNI-TTHTのガイダンス

発展を優先する裾野産業製品リストに含まれる製品を製造する投資プロジェクト(新規投資プロジェクトまたは拡大投資プロジェクト)がある場合、当該プロジェクトが、法律71/2014/QH13(各種税法の改正法)の規定に基づく裾野産業製品製造プロジェクトの条件を満たしており、裾野産業製品製造優遇確認書の発給を受けていれば、裾野産業製品製造優遇確認書の発給を受けた税務年度から裾野産業製品製造プロジェクトの条件に基づく法人所得税の優遇を受けることができます。優遇を受ける期間などは、以下の通りです。

優遇税率について:

優遇税率10%が15年間適用されます。
新規投資プロジェクトの場合、裾野産業製品製造優遇確認書の発給を受けた税務年度から優遇税率が適用されます。
優遇税率が適用される期間は、裾野産業製品製造プロジェクトの条件に基づく優遇税率を受ける期間から、他の条件に基づいた優遇税率を既に受けた期間を控除した残りの期間になります。

拡大投資プロジェクトの場合、優遇税率は適用されません。
免税期間、減税期間について:

法人所得税が4年間免税され、その後9年間は50%減税されます。
免税の適用期間は、各々のプロジェクト(新規投資プロジェクトまたは拡大投資プロジェクト)に関わる裾野産業製品製造プロジェクトの条件に基づく免税期間から、他の条件に基づいた免税を既に受けた期間を控除した残りの期間になります。

減税の適用期間は、各々のプロジェクト(新規投資プロジェクトまたは拡大投資プロジェクト)に関わる裾野産業製品製造プロジェクトの条件に基づく減税期間から、他の条件に基づいた減税を既に受けた期間を控除した残りの期間になります。
所得について:

同一期間の同じ所得に対して複数の異なる優遇措置を受けることが可能な場合、最も有利な優遇条件(本件の場合、裾野産業製品製造)に基づく優遇措置を選択することができます。この場合、投資プロジェクトから生じる所得について、裾野産業製品に該当しない製品から生じる所得に関しては、工業団地での投資プロジェクト(新規投資プロジェクトまたは拡大投資プロジェクトに関わらず)という条件に基づく法人所得税優遇を引き続き受けることはできません。

 

 

 

 

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